漫田久子の備忘録

日常、競馬など

中山遠征記(WINS浅草編)

土日を利用して東京に行ってきた。

 

朝5時に目覚ましをセット。予定通り起きるも要領の悪さを露呈し、始発の新幹線30分前に自宅を出発した。これはまずいと多少競歩気味で新幹線の最寄り駅へ向かう。しかし今の岩手は雪・アイスバーンでこの上ない道悪である。思う通りに脚が進まない。5分ほど全力で歩いたが間に合わないと確信しタクシーを探すことにした。

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しかしこういう時に限ってなかなかタクシーは現れないものである。3分ほど歩いたが一向に現れる気配はない。もう始発はダメか…そう諦めかけたその時、前方から1台の空車ランプを点したタクシーが!

 

「に こ に こ タ ク シ ー」

 

にこにこタクシーキターーーーー!全然見たことないタクシー会社だけどこれは神の恵みである。すかさず手を挙げ運ちゃんとアイコンタクト。運ちゃん静かに頷き車を停める。運ちゃん、思った以上ににこにこである。おそらく深夜からの勤務で早朝は疲労のピークだろうがかなりのにこにこでこちらまで笑顔になる。駅まで行くように告げると運ちゃんがにこにこしながら右折レーンと直進レーンを跨ぐように赤信号で停止し、「お客さん、どっち行きましょうか?(笑)」と聞いてくる。いや、それはお前が決めてくれという言葉を飲み込み、右へ進むよう告げる。乗車1分でイライラし始める俺を尻目に空いている道路を快調に飛ばす運ちゃん。日中なら10分はかかる道程を5分で着いてくれた。ありがとう。

 

会計で運ちゃんが「領収書の名前どうします?」と、領収書を切る前提で聞いてくる。いやいやこのラフな格好で出張なわけないやないかーい!とツッコミたくなったが無理もない。多少老けてるとは言え推定23歳ぐらいに見える青年が、まさか始発の東北新幹線に乗り込み上野で下車し銀座線に乗り換え、浅草で下車し浅草寺花やしきを通り過ぎWINSへ向かうなど想像するわけがない。東京到着後の最初の目的地がWINS浅草である。そんなバカな話あるはずがない。会社名で切ってタクシー代浮かせればよかったなという思いに後ろ髪をひかれつつ、しっかり20円のお釣りをいただいてタクシーを降りた。

 

何やかんやで上野に着きそこからの動きはまるで地元民である。一切駅表示を見ることなくスムーズに銀座線に乗り換え。いざ悪魔城へ。

 

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浅草で下車すれば後はいつものルーティンである。出口はあえて雷門から遠い出口を選ぶ。そして某ビールメーカービルの排泄物を模したと言われる金のオブジェを拝み馬券の好成績を祈る。隣には男性器を模したと言われる電波塔が見え気持ちは昂るばかりだ。

 

あとはWINS浅草(以下悪魔城)を目指すだけだが時間は9時。馬券発売開始が9時半なので少々時間がある。こういう時は浅草寺でベンチに腰掛けボーっとするのが良い。予想は前日にしてあるので焦って新聞の馬柱を見る必要もない。心の余裕も馬券で勝ち組になる必須条件だ。今頃汚らしいおっさん共(以下魔物)は東スポなどのしょーもない情報量の紙切れに無駄金を払い、あーだこーだぶつぶつ文句垂れていると思うと少々可哀そうになってくる。この時点で勝負は決まっていると言ってもいい。そう思いながらベンチに腰掛け発売開始時間を待つ浅草寺はなかなか乙である。

 

そもそも私が悪魔城をここまでボロクソ言うのには昨年10月の因縁があるからである。当時私は3連休を利用し毎日王冠を観戦しに東京遠征を敢行した。同い年の競馬仲間である錦織圭似の大阪人と、静岡から来たマックスむらいと共に94年会なる同級会を開催し非常に楽しい一時だった。

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ちなみにマックスむらいが連れてきた1歳年下の風俗狂いも一緒に楽しい一時を楽しんだわけだが、毎日王冠の翌日、マックスむらいと風俗狂いと私で悪魔城を攻め落とすことになった。毎日王冠で◎マカヒキ単勝50kを含む10万負けを記録していた私にとっては負けられない戦いである。並々ならぬ覚悟で悪魔城へ向かった。

 

しかし悪魔城でマックスむらいと風俗狂いと合流した私は散々だった。正午を前に5万負け。東京遠征合算で新卒社会人の手取りと同等の額負けている。当時の私は馬券で非常に潤っていたがさすがに焦る負け方である。というか今冷静になって見直すと負けすぎだ。金銭感覚が狂っている。そんなに私だから普段買わない新馬戦のワイド1点5倍に1万円投資である。頼む頼むと祈るように見つめたレース。結果は的中だった。5万円の払戻である。時すでに遅し感はあるが嬉しくないはずがない。マックスむらいと雄叫びをあげ歓喜に沸いた(風俗狂いはネカフェにJRA公式馬柱をプリントしに行くという謎の奇行をしていたためいなかった)わけだが、そこでいきなり怒声が飛んできた。

「そんな安い馬券を当てて喜んでんじゃねえええ!!!!」

私とマックスむらいは虚を突かれ目が点になる。決して安くはない馬券を当てそんなことを言われるとは思わなかった。まあたしかに馬券下手くそな魔物たちがくそみそにやられているとは知らず配慮が足りなかったかもしれないが、あまりの言い草である。その時私はこの魔物たちに帯封を見せびらかし卒倒させることを決意した。下級民族に選ばれし上級競馬民の格の違いを見せつける。その復讐戦の舞台が始発で向かった悪魔城なのである。

 

悪魔城に向かう私の足取りは軽い。正直まったく負ける気がしない。腹ごしらえに悪魔城向かいのすき家に入ったが相変わらず外国人店員しかいない。実家のような安心感が私を落ち着かせる。そこに汚らしい魔物が入ってきた。メニューを広げ出されたお茶を飲む。お茶を飲み干しメニューを閉じ当たり前のように店を出る。面食らう私と慣れた様子でコップを片付ける店員。これまた実家のような安心感である。そんなほっこりする時を経て悪魔城へ到着した私は、慣れた様子で2階の100円単位売り場に。ここが因縁の場所である。財布から15kを取り出し早速阪神1Rを購入した。

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阪神1Rの1番人気は武豊騎乗のグアン。武幸四郎調教師初出走馬に兄が乗り勝利をもたらす。そんな甘い話があってはならない。ただ他馬との比較で切るわけにはいかなかったので、大外メイショウサンアイを本命にしそこからグアン含む3頭に流す3連単に決めた。メイショウサンアイはダート替わりがすごく合いそう。母父アフリートのディープ産駒というのもなかなかそそられる。かなり自信があった。

しかしレースは大きく期待外れ。内枠3番の浜中俊がスタート直後に落馬しカラ馬がレースをぶち壊す。特にメイショウサンアイは終始絡まれて4コーナー手前で大失速。ついてなさすぎる。結局グアンが勝利し競馬は甘いスポーツだと証明されてしまった。見事なまでの逆神で顔から火が出る恥ずかしさだ。

ちなみに阪神現地ではグアン、武兄弟の勝利が多くの人に祝福され、だいぶ温かい空気だったようだが悪魔城にそんな空気は存在しない。終始「死ね」「失せろ」「邪魔だ」「お前が勝っても意味ないだろ」などカラ馬、グアンに対する罵声が飛び交う。またこれもわびさびだが(違う)、鉄火場とは何なのか深く考えさせられる場所だとしみじみ思う。

 

その後阪神2Rを外した私は悪魔城から退出した。完敗である。花やしきから聞こえる笑い声が、完膚なきまでに叩きのめされた私を魔物たちが笑っているかのように思わせる。最近発掘された「十二階」こと浅草凌雲閣の遺構を見に行ったが、関東大震災で崩れ落ちたその姿はまるで今の私を映し出しているかのようだった。再起を誓いWINS錦糸町へ向かう。(続く)