漫田久子の備忘録

日常、競馬など

岩手競馬がどれだけ危機的状況なのか競馬民のほどんどがわかっていない件

我が故郷・岩手の競馬界が揺れている。

 

2回の禁止薬物検出問題で大変なことになっていた岩手競馬だが、ついに3回目の禁止薬物検出が発生してしまった。組合は当面の開催自粛に追い込まれ、岩手県警が捜査に動く異例の事態となっている。

 

「公正競馬」という理念から言っても当然大問題であるわけだが、今回の事件はその次元をはるかに超えた超危機的状況だ。正直競馬民の大半がその事態に気づいていないので、この記事を書き始めた。

 

まず言っておくと、故郷が岩手というだけで私自身、岩手競馬に思い入れがなに1つない。両親はギャンブルを一切やらない人間だったので、よくある「小さい頃に親に競馬場へ連れて行ってもらい競馬にハマった」みたいに、自分における競馬の原点的な存在でもない。3歳の時に私が「馬を見たい」と言って連れて行ってくれたことはあったみたいだが。

 

大学時代は京都に住んでいてほぼ毎週仁川か淀に通っていた人間なので、「岩手戻ったら盛岡競馬に入り浸るんだろうなあ…」などという一種の心配も当時していたが、まったくの杞憂に終わった。それはなぜか。岩手競馬がクソだから。配当もクソ安いし競馬場へのアクセスもクソ悪いし駅から出てる送迎バスも貧乏くさいジジイばかり乗ってるし何故か岩手の騒音ババアことふじポンを広告塔に据えてるしシンセサイザーのファンファーレが頭痛くなるし…etc.挙げれば切りがないほど正直嫌いな部類に入る競馬かもしれない。だから去年にマーキュリーCを見に行って以降一度も競馬場へ足を踏み入れていない。南部杯に合わせて毎日王冠オフ会を実施する徹底ぶりだ。

 

そんな私が今回の事件に心を痛めている。というよりは憤っている。

 

岩手競馬は正直どうでもいいが、大好きな競馬を冒涜され、競馬に命を懸けている関係者の熱い志が、しょうもない何者かによって妨害されている事実がどうにも咀嚼できないでいる。拒絶反応とも言うべきだろうか。

 

今回の事件、極めて外部犯の可能性が高い。僕が思っていたことをスダホーク氏がうまくまとめてつぶやいていたので、後からそちらもチェックしてもらいたいが、そもそも厩舎関係者がこんなことをするはずがない。薬物が検出された馬は低いクラスの馬でわざわざここで禁忌を犯してまで勝とうとする意味がないし、こんなバレバレなことを繰り返す意味もわからない。八百長目的でやったとも考えづらい。理由は同じで、こんなすぐバレることをする意味がないから。

 

となるとこの実行犯にとっての「正義」はなにか。当然そんなものはない。ただ岩手競馬を妨害するためにやっている愉快犯だ。ひどい話である。そんなことを組合関係者がするはずもないので外部犯なのは間違いない。しかも単独犯ではないだろう。警備を掻い潜りこんなことを1人ではできるはずがない。

 

などとという誰でもできる推理は置いといて。今回の事件で岩手競馬が存亡の危機に立たされていることに、読者の何%が気づいているだろう。はっきり言って潰れるどうかのところまで来ている。

 

岩手競馬は長らく赤字経営が続いていて10数年前まで廃止一歩手前の瀬戸際だった。もちろん公営ギャンブルで税収で運営しているわけだから、その損失は岩手県民が負担しなければならない。そこで生まれたのが「単年度における収支均衡」の原則であった。

 

これは一言で「1年でも赤字になったら岩手競馬廃止するで」という決まりだ。これが規定されたと同時に岩手競馬岩手県盛岡市奥州市の3つの自治体から、計330億円にものぼる融資を受けた。これももちろん税金であるが、毎年負担が積まれていく岩手県民を守るために突きつけられた条件であり、岩手競馬はその瞬間から健全経営を義務付けられた形である。

 

その後の岩手競馬は震災を乗り越えなんとか安定経営を継続。ネット発売にも助けられた。府中の場外馬券場は機能しているかわからないが、中央競馬民のラストエリクサー的な存在みたいにはなっている。組合はこの10年頑張ったと思う。

 

そこに今回の事件が発生してしまった。開催自粛がいつ終わるかわからないが、イメージダウン・開催日数の減少を含めて損失ははかりしれない。もし4回目が起きたら…。少なくとも開催できる運びにはならないだろう。そうなると赤字の可能性は高まり岩手競馬廃止、330億は返済不可能。ああ恐ろしい。

 

岩手競馬にも落ち度はある。仮に外部犯だとしたら、そんな簡単に侵入されるようなシステムはちゃんちゃらおかしい。防犯システムを軽視していたツケが来てしまった感じか。まあ中央競馬ならまずないだろう。トレセンの防犯システムは厳重なことで知られている。競馬記者が宿舎で乱痴気騒ぎを起こしたみたいだが。

 

とはいえこんなことで存亡の危機に晒されてしまっている事実は変わらない。このしょうもない事態に憤りを感じる。「単年度における収支均衡」はもちろん平常時を念頭に置いているので、今回の異常時で特例措置が取られる可能性はある。しかしこの前例のないありえない事件を無事に解決し再発防止の見通しが立たない限り、「公正競馬」である以上再開するべきでないだろう。ここにきて岩手競馬の経営体質が問われている。