漫田久子の備忘録

日常、競馬など

【実話】成人式より優先したグァンチャーレのシンザン記念

寒さも厳しい、懐事情も厳しい、何もかもが厳しい候。無個性な振り袖姿の女の子達が、雁首揃えて首元に白いファーを巻き付けて街を闊歩する季節がやってきました。そう、もうちょっとで成人式です。

 

みなさんは成人式の思い出がありますか?クラス会や同窓会で久々に旧友と再会した思い出、羽目を外し過ぎて飲んだ酒を全部吐いてしまった思い出、市長のありがたいお話を妨害することに命を懸けた思い出…。十人十色ですね。心のアルバムにかけがえのない1ページが加わったことでしょう。

 

僕の場合、京都競馬場で行われた成人式に参加しました。20歳は自分と友達の2人だけでしたが、来賓のおじさんたちをはじめ、新成人の父兄と思われる方々など、沢山のどうしようもない人生の先輩に囲まれ、あの大事な日を迎えることができました。この場で感謝申し上げます、ファッキュー。

 

その時の気持ちはというと、それはそれは清々しい(本田風に言えば「きよきよしい」)ものでした。ああ、これで僕もどうしようもないやつらの一員だなあ。なんだか社会の一員として自覚が芽生えた気がします。

 

次々に届くLINEやFacebookの投稿には、まぶしいほどに輝く旧友たちの姿が映ります。みんな大人になったなあ。前途明るい未来へそれぞれ羽ばたいていくんだなあ。ふとコース中央の池に目を移すと、そこには飛べないように羽の腱を切られた可哀想な白鳥たちがいました。僕は羽ばたけないのかなあ。鳥に自己投影する自分もいました。その1年後、白鳥たちは鳥インフルに罹り殺処分されてしまいます。

 

「おい!なんで成人式来てないんだよ!」みたいなLINEの返信にうんざりしてきた僕。「競馬場に来ています」と真面目に返すのも癪だったので、「名馬の誕生を目撃しに来たよ」と返すことにしました。シンザン記念自信の◎クイーンズターフ。名前がまず強そうだ。名前通り、芝の女王にならないわけがないだろ。伝説の名牝になる。こんな名前しといてデビュー戦ダート走ってるのはかなり気になるけどご愛嬌ご愛嬌(*^^*)(*^^*)

 

このレースで勝ったのがグァンチャーレ(豚ほほ肉の塩漬け)でした。豚ほほ肉の塩漬け!?こんなふざけた名前の馬が強いわけないだろ!!と思ってたらめちゃくちゃ強い馬でした。まさか7歳まで走って息の長い活躍をするとは。重賞勝ちは結局シンザン記念のみでしたが、重賞でも馬券によく絡んで、間違いなく競馬ファンの思い出に刻まれる馬になりました。

 

対してクイーンズターフは生涯で11回1番人気に推されるも勝ったのは2回だけ。馬の強さは名前じゃない、ということを教わりました。成人式を欠席したことで。得られたものはむしろこれだけでしたが、まあ後悔していませんよ。今までの自分の数ある選択、それは成功も失敗も含めてですが、それらがあって今の自分が出来上がったわけですからね。後悔したら自分を全否定ですよ。…ええ、成人式はちゃんと参加すべきでしょう。(グァンチャーレお疲れ様でした)